Discography

CD Cantilena カンティレーナ 12のピアノ小品集

収録曲 

①ヘンデル:シャコンヌ ト長調
②メンデルスゾーン:無言歌集より ヴェネツィアのゴンドラの歌 作品30-6
③グリーグ:抒情小曲集より トロルドハウゲンの婚礼の日 作品65-6
④シューベルト(リスト編曲):水の上にうたう
⑤リスト:巡礼の年第1年「スイス」より第4曲「泉のほとりで」
⑥プーランク:即興曲第15番「エディット・ピアフを讃えて」
⑦グァスタヴィーノ:カンティレーナ 第5番 「アベラルダ・オルモス」
⑧ショパン:ノクターン 第20番 嬰ハ短調 遺作
⑨メトネル:忘れられた調べ第1集より「祝祭の踊り」Op.38-3
⑩チャイコフスキー(プレトニョフ編曲):演奏会用組曲「くるみわり人形」より「アンダンテ・マエストーソ」(グラン・パ・ドゥ・ドゥ)
⑪ラヴェル:組曲「鏡」より「道化師の朝の歌」
⑫バッハ=ジローティ:プレリュード ロ短調
 
米川幸余(Piano) 
QACK-30003 発売元 T&Kエンタティンメント株式会社 販売元 日本コロムビア株式会社
2011年4月20~22日 笠懸野文化ホールにて録音

レコード芸術 2011年12月号 CD Review

ピアニストの米川幸余は桐朋学園卒業後ザルツブルクのモーツァルテウム音楽院(現ザルツブルク芸術大学)に留学し、第54回日本音楽コンクール・ピアノ部門、第12回クララ・ハスキル国際コンクールなどの入賞歴を持つ。大阪出身ということもあるのだろう。関西フィルや大阪フィルなど関西のオーケストラとの共演が多く、ベルリン弦楽四重奏団やライナー・キュッヒェルらとの室内楽などを行い、現在愛知県立芸術大学や上野学園大学で後進の指導にあたっている。
ディスクは冒頭のヘンデルの『シャコンヌ』と最後のバッハ/ジロティの『前奏曲』ロ短調の間に、メンデルスゾーンの『無言歌集』やグリーグ『抒情小曲集』からの楽曲、ショパンの『夜想曲』、プーランクの即興曲第15番『エディット・ピアフに捧ぐ』などの主にロマン派・近代の様々な作品を集めた名曲選である。ほとんどが良く知られた作品ばかりで、珍しいところは、表題曲のグァスタビーノの『カンティレーナ』だろうか。力みのないほどよく脱力したした明るい美しい音や洗練された音楽性がオーストリアで学んだ人らしい。各曲のキャラクターの違いがもっと出ているとより楽しめるのだが、フレーズにひと肌の温もりが感じられ、そこにピアニストの個性が息づいている。とくに印象的に残ったのはアルゼンチンの作曲家による表題作。たゆたうような音の運びやふとした情熱的な高まりが美しい。<那須田務>


録音評
やや軽量感を伴いながらも、音の一粒一粒のアタックがしっかりと記憶されている感覚のサウンドが魅惑的である。いわば正統派的な収録でありながら、妙に重かったり煌びやかにアタックを強調することがなく、抜けよくのびやかな明るさを伴うピアノが然るべきサイズ感と音場を伴って快い音を結実させている。笠懸野文化ホールPALでの2011年4月の収録。(90~93)<神崎一雄>

米川幸余は桐朋音大を了えてのちザルツブルク・モーツァルテウム音楽院で研鑽を積んだピアニスト。帰国後、国内で演奏活動を続けており、何年か前に発表されたCDは、たとえ派手さはなくとも音楽性に富んだものとして記憶に残っている。ここに現れた小品集には「カンティレーナ」と表題がつけられているが、これは米川幸余がこのアルバムを編む動機になったという、アルゼンチンの作曲家カルロス・グアスタビーノ(1912~2000)の作品「カンティレーナ」第5番[アベラルダ・オルモス]にもとづく。ピアニスト自身が解題に記すところでは、彼女は初め、B=L・ゲルバーがアンコールに奏でたグアスタビーノの作品『バイレシート』に心惹かれ、その楽譜を探し出した折、そこに併載されていたくだんの『カンティレーナ』にもあらたに心を奪われ、いつかこれを録音して紹介したいと考えたのだという。というわけで、このアルバムは、この知られざる逸品を中心に置き、その前後にヘンデル、メンデルスゾーン、グリーグ、シューベルト、リスト、プーランク、ショパン、メトネル、チャイコフスキー、ラヴェル、J・S・バッハなどによる小品たちを”敷き詰めて”作られた。いずれの曲からも、ピアニストが各曲に寄せる共感と愛着とが、おのずとにじみ出てくる感があって、聴きてはその便りの一葉一葉を、美しくあたたかい詩のように受け取ることができる。好感度の高い演奏とは、このような演奏のことを言うのだろう。<濱田滋郎>


CD Scarlatti 13 Sonatas スカルラッティ:13のソナタ集

スカルラッティ 13のソナタ集

収録曲 

①ト長調 K.146 ②ホ長調 K.380 ③ト長調 K.427 ④ハ長調 K.513 ⑤ロ短調 K.27 ⑥ト長調 K.454 ⑦ヘ短調 K.481 ⑧イ長調 K.212 ⑨ヘ長調 K.107 ⑩ホ長調 K.531 ⑪嬰ハ短調 K.247 ⑫ニ長調 K.491 ⑬ニ長調 K.492
米川幸余(Piano)
FOCD3430 録音1997年11月19日~21日彩の国さいたま芸術劇場
3,204 (税込)

レコード芸術1998年7月号 CD Review

米川幸余は若手であるが、1987年にクララ・ハスキル国際コンクール(スイス)に入賞しており、コンサートアーティストとしての活動は、すでに10年あまりにおよぶ。CD上には初登場かと思うが、このスカルラッティ集は、きわめて筋のよいピアニストかつ音楽家の存在をあきらかにしていることを、ぜひ一筆したい。選ばれた13曲のソナタは、ごく有名なもの、さほどには知られぬもの、快速テンポのもの、ゆっくりと抒情味を湛えたものなどが適宜に揃えられ、十分に配慮されたプログラムとの実感を与える。演奏ぶりは現代のピアノによる演奏としてあえて奇を衒わず、広くつちかわれてきた常識的な表現法の上に立つものだが、だからと言って平凡ではない。たとえば「ヘ短調K481]の哀感ゆたかなカンティレーナに示されるタッチの美しさ、無機的には響かないしっとりした感触のうれしさは、聴き手の心に忘れがたい印象をとどめるに違いない。急速なソナタの数々にはもちろん活発な指のめぐりが披露されるが、そこでもニュアンスに富んだ、機知に富む表現がかいま見られて、感興をかき立てる。もしさらに欲深く要求するなら音の色彩をもう一段多様に、曲のひとつひとつが、あるいは曲の各部分が、よりきわ立った面差しを持つようにひき分けられたら…と思わぬではない。だが、ともあれ、このスカルラッティリサイタルは、若いピアニストの演奏としてきわめて好感の持てるものだ。<濱田滋郎>


大阪府出身で桐朋学園大学、東京音楽大学研究科、ザルツブルクのモーツァルテウム音楽院で学んだ米川幸余のCDデビュー盤。クララ・ハスキル国際コンクール入賞、シューマン国際コンクール第2位、台北国際ピアノコンクール入賞といった楽歴を持ち、92年日本デビューを行い94年大阪文化祭奨励賞を受賞している。録音は97年11月。
D・スカルラッティの本来チェンバロのために書かれたソナタ(練習曲)から13曲を選んでいるが、米川はきわめて限られたサイズのこれらの曲で、それぞれの曲の特徴をよく捉えてピアノに移しかえて解釈しており、どの曲からもきわめて自然な音楽性を聴くことができる。もちろんこれらのソナタは今日のピアニストにとってテクニック的にはなんら困難なものではないが、米川の演奏の優れている点はその限られたサイズと様式のなかで、かなり自在に遊んでいることであり(あえて言えばであり、けっして悪い意味ではない)、そこに生まれるある種の解放感は貴重なものだ。これはけっしていわゆる歴史的演奏からは生じない類のものだ。
 そうした表現を可能にしているのは米川のシャープな音そのものであり、また独特の軽妙なリズム感であろう。米川は先へ先へと進行するリズム運動を巧みなアゴーギクで操作し、そのことから独特の喜遊感が生まれる。きわめて率直な表現力を身に付けているこの若手の将来に期待する。
<武田明倫>


97年の11月に彩の国さいたま玄術劇場で録音されたもの。
 左右両スピーカー・システムの中央域にやや小さめな音像に低位させたピアノ録音であるが、両サイドから適度なホールの残響音も聴こえ、ステレオ音場展開も悪くない。
 距離感は、やや近めであるが、音のくずれも少なく、明瞭度もあって、一つ一つの音の粒立ちもはっきりととらえられている。(93点)<若林駿介>


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